結婚は、お互い言い出せなくても二人の意思が合致していて、自然に結婚届を出すカップルがいます。これからの生活を一緒に始めるだけですから、それほど制約になるものがないからです。
ところが離婚は、制約だらけです。一緒に生活してきた間に出来た財産分与から、再び別れて生計を立てる場合の収入の確保まで考えるべきことはたくさんあります。
一時の感情の高ぶりに任せて離婚を切り出したり、いきなり切り出された時にあたふたしたりしがちです。
どちらの側になるにしても、心の準備から将来設計までしっかりしておかないと、離婚は失敗に終わる可能性が大きくなります。
離婚の手続きは二人が合意する協議離婚が約9割を占めていますが、必ずしも二人が納得して合意しているわけではありません。統計はありませんが、協議離婚でも弁護士を入れた方がスムーズに行く場合があります。
ある弁護士の感覚では、割合として協議離婚の5%程度に弁護士が介入しているようです。ただし、弁護士費用は決して安いものではないので、しっかり検討しておく必要があります。
協議離婚で合意が得られない場合は、裁判所での調停・審判・裁判といった手続きに入っていくことになります。この場合、離婚の成立までには時間もお金もかかります。
いくら二人の間がギクシャクしていたとしても、法律的には夫婦関係が継続しているわけですから、感情だけで離婚できるものではありません。経済的な問題、子どもの問題、親の問題とあげればキリがないほど障害になるものがあります。
離婚の決断には十分な準備と根回しが必要です。それは二人だけの問題ではなく、まわりにいる多くの人に影響を及ぼす問題だからです。ただし、その根回しが相手にわかってしまっては準備になりませんから、周到な戦略を立てなければなりません。
特に重要な準備を下にあげておきます。
特に女性の場合の経済的な自立はそれほど簡単ではありません。周到にシミュレーションしておきましょう。
離婚による影響を一番身近で受けるのは子どもです。子どもの心のケアがしっかりできるか、子どもが理解してくれるか、しっかり考えた上で結論を出しましょう。
離婚に決着が着くまで、離婚後も一人で生活していくのです。精神的な支援者の存在は必要です。友だちがいない人は、孤独にさいなまれて精神的なストレスを抱えることになります。
別居が続いていたり、夫婦関係が冷え切っていた場合は、離婚の予感があるかもしれません。ところが、こちらでは円満だと思っていた関係が相手はそうは思っていなかったりすることも珍しくありません。
日頃から円満な関係を築いておくことがなにより大切ですが、万一相手から離婚を切り出された場合は、とにかくうろたえないことです。
こちらも離婚を考えていた場合は、「離婚しましょう」「わかったそうしよう」で簡単に合意ができて協議離婚が成立するかもしれません。仮にそうだとしても財産分割や諸々決めなければならないことがあるので、軽々と決めることではありません。重要なことをうっかり約束したばかりに後々たいへんな不利益になることもあります。
相手から切り出されたら、うろたえずに時間をかけて話し合うことが重要です。
世の中の離婚件数のうち約9割は協議離婚です。調停などの裁判所を使う離婚はそれほど多いわけではありません。協議離婚は、二人の合意があれば、どんな内容で合意してもいいのですが、離婚は法律行為のひとつですから、やはり専門家のアドバイス等はあった方が公正に進められます。
弁護士への利用の仕方は、大きく分けて事件委任、法律相談の二つがあります。
事件委任すると、委任した当事者に代わって相手と交渉してくれます。もし相手の顔も見たくない、直接話すと高ぶって冷静に話ができない、といった場合は、協議離婚でも弁護士に委任した方が、話が進むことが多いようです。
弁護士に離婚に関する事件依頼をした場合の弁護士費用は、事務所によってかなり異なりますので、事前に調べてからがいいでしょう。
弁護士費用には着手金と成功報酬がありますが、成功報酬は分割する財産の額等によって変わってきます。
たいだいの弁護士事務所は、30分5,000円で法律相談を受け付けています。時間制ですから、相手に対する不満やグチを言っているとどんどん時間は過ぎてしまいます。
法律相談を受ける前に、何が聞きたいのか、しっかり整理してメモを作ってから行くのが賢い弁護士の利用法です。
もし、事件委任を考えているのでしたら、何人かの弁護士と法律相談をして、一番合いそうな弁護士にお願いをするのがいいかもしれません。
離婚には、大きく分けて二つの方法があります。ひとつは夫婦の話し合いで離婚する協議離婚と、裁判所で決着する調停離婚です。
夫婦2人で話し合い離婚に合意することをいいます。離婚について双方が合意すればできます。理由や事情はまったく関係ありません。一番一般的な離婚方法で、離婚90%は協議離婚となっています。
ただし、離婚にあたっては合意しなければならないことは、たくさんあります。
協議離婚が成立した場合には、離婚協議書を作成し、これを公正証書にしておけば、後のトラブルを回避できます。
公正証書は、国の機関である公証人が、厳格な手続を踏まえて作成した公文書です。公証人の作成する公正証書に対して、一般に私人間で作成される契約書や覚書や約定書等の書類は、私文書または私署証書といわれています。離婚の場合には慰謝料・養育費・財産分与の支払いに関して利用されています。
公 正 証 書 と 私 文 書 の 違 い | |
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公正証書 |
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私文書 |
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離婚にあたって相手と合意しなければならないことは大きく分けて以下の7点です。これは、協議離婚の場合も裁判所を利用する場合も同様です。
離婚のための基本中の基本の前提となるものです。愛情がなくなれば離婚そのものは簡単かもしれませんが、子どもがいたり財産があるとそう簡単には合意に達することはありません。二人で合意(協議離婚)出来ない場合は、家庭裁判所で調停などの必要な手続きをします。
夫婦は相互に協力し結婚生活を維持するという前提がありますので、生活維持のための費用なども含まれています。
ただし、単独で日常生活で使用するもの(衣類・装飾品など)、結婚前に所有していた財産、相続を受けた財産については含まれません。
種 類 | 解 説 |
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清算的財産分与 | 結婚期間中に得られた預金、不動産等は夫婦が共同で得たものとされますので、その財産を平等に分割し精算します。 |
扶養的財産分与 | 結婚期間中に得られた預金、不動産等は夫婦が共同で得たものとされますので、その財産を平等に分割し精算します。 |
慰謝料的財産分与 | 裁判となった場合に、精神的な損害賠償(慰謝料)を財産分与に加え、金額を考慮する場合があります。協議離婚の場合でも、相手が支払うことに合意すれば支払われます。 |
過去の婚姻費用の清算 | 別居中に生活費(婚姻費用といいます)を支払っていなかった場合などに、その費用を財産分割で調整します。 |
不貞行為等が原因の場合に、離婚原因により精神的苦痛を与えた側が相手方に支払う賠償金です。
親権とは、子どもが未成年の場合の、子どもの法定代理人のことをいいます。法的にはこのような関係になりますが、自身の子どものことですから単なる法的な関係以上のものがあります(法定代理人とは、単独で契約などの法律行為を行うことができない未成年などの代理をする人のことです)。
監護権は、子どもの身分(例えば、結婚・離婚など)に関する代理権のことですが、それに付随して子どもの身のまわりの世話・教育・しつけ等をする権利のことをいいます。ただし親権・監護権は子どもの保護をする義務もありますから、放置するようなことをすると保護責任者遺棄罪で処罰の対象となることもあります。
これらの権利の争いとなった場合、子どもが小さい場合は母親が親権者と認められる場合が多いようですが、ある程度の年齢であれば、子どもの意見も尊重されます。平成25年1月1日施行の家事事件手続法(旧家事審判法)では、15歳以上の子どもについては、意見を聞かなければならないとされています。
実質的に父親が子育てをしている場合などは、父親が親権者になれる可能性もあります。
また、未成年の子がいるときは、親権者を決め離婚届出用紙に記載しなければ、役所で離婚届けは受理されません。
子どもを引き取らなかった親が子どもに対して支払う費用のことです。金額で合意が得られなかった場合は裁判所が公表している養育費算定表を目安に、お互いの税込年収を基礎に計算される場合が多いようです。
子どもを養育していない親が、離婚後に子どもと面会等する権利のことです。
詳細は婚姻期間中の財産分与をご覧ください。
相手が勝手に離婚届を提出するおそれがある場合、一方的な離婚をさせないために、夫婦の本籍地、または夫婦の所在地にある市役所へ「離婚届不受理申出書」を提出しておきます。
この申出は、申出人が自筆で署名押印し、市役所に取下げの手続きをするまで有効です。申立用紙は役所で入手できます。
裁判所を利用する離婚の場合、まず調停の手続きから始めます。調停で決着がつかなかった場合は、以後、審判、裁判へと進みます。
話し合いで合意できない場合や話し合い自体ができない場合に、家庭裁判所を利用して離婚をする手続です。離婚原因を作った配偶者からの申立ても可能です。
不調(不成立)の場合は、不調調書が作成されます。調停期日には代理人が付いていても、双方出席することが必要です。
相手が勝手に離婚届を提出するおそれがある場合、一方的な離婚をさせないために、夫婦の本籍地、または夫婦の所在地にある市役所へ「離婚届不受理申出書」を提出しておきます。
この申出は、申出人が自筆で署名押印し、市役所に取下げの手続きをするまで有効です。申立用紙は役所で入手できます。
東京家庭裁判所のホームページには、申立書の定型書式及び事情説明書等が掲載されています(Word、Excelファイル)。記入例と説明文も掲載されています。
「裁判所」トップページ→「各地の裁判所」→「東京家庭裁判所」→「裁判手続き利用する方へ」→「手続案内」→「家事事件の申立てで使う書式等」で入手可能です。
裁判所を利用する離婚の場合、まず調停の手続きから始めます。調停で決着がつかない場合は、以後、審判、裁判へと進みます。
離婚や円満調整に付随する部分の財産分与、養育費、親権に関する部分で調停が不成立となった場合には、当然に家事審判手続きに移行します。
離婚自体が合意にとならない場合でも、細かい食い違いなどで合意できないなど、これまでの調停の経過や調停委員の意見を聞いて家事審判官の判断で「調停に代わる審判」により離婚の決定をすることもあります。
審判の決定について2週間以内に異議申立があれば、審判の効力を失いますが、異議が出ない場合は、確定判決と同等の効力を有し、離婚の決定が出ていた場合は離婚が成立します。
審判告知から2週間以内に、どちらか一方が異議申立書を提出すれば、審判の効力は失われます。
協議離婚、調停離婚が成立しない場合に、家庭裁判所に訴えを起こす手続きです。